1)学習障害/LDとは
「知的水準は平均レベルにある」ものの、授業の内容が全く理解出来ない、漢字が書けない、読めない、算数が出来ない」など主に学習面に於いて困難を示す就学児のことを指します。学習障害/LDを抱えているお子さんは各発達年齢に応じて新しい情報に対する理解や反応、処理に困難を示す場合もあります。したがって学習障害/LDを抱えるとその障害が学校生活や勉強の妨げとなるだけでなく前述の理由から情緒的な問題も結果として抱えてしまう場合もあります。ですが、お子さんが学習障害/LDだからといって保護者の皆様が悲観的になりすぎてしまうのも、どうかと考えます。保護者様が学習障害/LDに関して正しい理解を持ち、早い段階にてお子さんに適切な指導を受けさせ、お子さんの長所と短所を見極めることが重要です。
学習障害/LDを持つお子さんはADD/ADHDなどの発達障害を併発している場合もあります。この様な場合はどのお子さんでも必要なのは自己肯定感を与えてあげることだと考えます。就学児の自己肯定感は他人評価と比例します。したがって、保護者様や学校の先生の理解抜きではお子さんは自己肯定を得る事は出来ないでしょう。今現在行われている発達心理検査に於いて最も信頼のおける検査はWISC検査です。小学校3年生位から特定の学習領域に困難を示したり、極度に宿題などをやりたがらない場合など、サインは各々のお子さんによって違いますが、WISC検査を受ける事によってお子さんの得意な領域や苦手部分、または発達障害、学習障害/LDなどが発見される場合が殆どです。児童精神科、小児神経科、各行政機関などでも検査可能です。
(社)加藤永江教育研究所では経験豊かな臨床心理士による検査を行っております。是非御相談下さい。他機関と違い敷居が低いので気軽にお越し頂けます。
2)学習障害/LDとは何でしょう?
それでは学習障害/LDは具体的にどの様な事柄を以って、学習障害/LDと判断され、どのような特徴が挙げられるのでしょうか?学習障害というのは、広範囲にわたる学習上の問題に対する包括的な用語です。学習障害/LDは知能や本人の意欲によるものでもありません。(社)加藤永江教育研究所でも様々な症例をみてきましたがWISC検査の結果総合IQが130あっても学習障害が認められるケースもあります。学習障害児は怠惰なわけでも頭が悪いわけでもありません。実際には他のお子さんの様に普通の子なのです。単に脳の配線が違うだけなのです。
この違いが情報を受けて処理する方法に影響を及ぼします。単純に言えば、学習障害が認められるお子さんは物事を他のお子さんと違うふうに見て聞いて、理解するということです。この為、1)にも記載している様に新しい情報や技能を得て、それを利用するのに悩むことがあります。諸外国で最も良く見られる学習障害のタイプは読むこと、書くこと、計算すること推論すること、聞くことがうまくいかないというものですが日本国内に於いて1番認められるのが書字障害に対し欧米では読字障害です。その理由はまだ明らかにはなっておりませんが恐らく書字障害を抱える就学児が多いのは国語という、ひらがな、カタカナ、漢字の訓読み、音読みといった他の言語よりも書く文字の複雑さが関係していると考えられます。
3)学習障害(LD)のタイプ
学習障害は、学校で習得する技能によって分類されます。そして、お子さんが既に就学してる場合に最もよく分かる学習障害のタイプは通常読字、書字または算数に関するものです。
1、読字の学習障害(LD)難読症
読字の学習障害には2種類あります。音、文字、単語の関係を理解しにくいとき、基礎的な読字力に支障をきたします。単語、語句および段落の意味を理解することができないとき、読解力に支障をきたします。読字障害の徴候として、以下のことに支障をきたします。
文字と単語の認識単語と概念の理解読む速度と流暢さ一般的な語彙力
2、算数の学習障害/LD(失計算)
算数の学習障害は、お子さんが持つ他の長所や短所に大きく左右されます。お子さんの算数力は、言語学習障害や視覚障害の他、物事を順番に並べることが出来ない、記憶力が悪い、物事を秩序立てて行うことが出来ないといったことによって、それぞれ異なる影響を受けると思われます。
算数の学習障害があるお子さんは、数、計算符号(例えば5+5=10や5×5=25のような)数の「事実」を記憶したり整理したりするのに苦労することがあります。また算数の学習障害/LDのあるお子さんは計数の原理が苦手であったり、時計が読めなかったりすることもあります。
3、書字の学習障害/LD(書字障害)
書字の学習障害は書くという身体的行為や情報を理解してまとめるという精神的活動に関係する可能性があります。基礎的な書字力の障害(LD)は単語や文字を形成するのが物理的に難しいというもの です。書字表出障害は、紙に自分の考えをまとめるのに苦労するというものです。書き言葉の学習障害にみられる症状は、書くという行為に関するものです。具体的には、以下のことに支障をきたします。
整然として矛盾のない文字を書く
文字や単語を正確に写す
綴りを正しく書く
統一性のある秩序だった文字を書く
4)他のタイプの学習障害
読字、書字、算数だけが学習障害によって影響を受ける技能ではありません。他のタイプの学習障害として、運動技能、話し言葉の理解、音の識別および視覚的情報の理解に支障をきたすといったこともあります。
運動技能の学習障害(統合運動学習障害)
運動障害は、細かい運動技能(切る、書く)であれ、大きな運動技能(走る、飛ぶ)であれ、運動と筋の強調に支障をきたしている状態です。運動技能は時に、脳からの情報出力に関係していることを意味する「出力」活動であると言われることもあります。走り、飛び、書き、何かを切るには、脳がその動作を行うのに必要な手足と連絡できなければなりません。お子さんの発達年齢よって異なりますが、例えば小学生の中学年になっても鉛筆を握ったりシャツのボタンを留めたりすることなど、手と眼の強調運動がうまくいかない場合も見受けられます。その場合は運動協調障害/LDを疑います。
5)言語の学習障害(失語症/不完全失語症)
言語とコミュニケーションの学習障害/LDは話し言葉を理解したり自ら言葉を発したりする能力に関するものです。さらに言語は何かを口頭で説明したり他の人とコミュニケーションをとったりするために、脳内で考えをまとめて正しい単語を選ぶことが必要であるため、脳内の出力活動に原因があると考えられています。言語に関する学習障害の微候として、物語を話す能力や発話の流暢さ、単語、また、授業やテストに於いて、指示の意味を理解する能力などの技能に支障をきたしている場合があります。
6)相対的に考えられる学習障害の特徴
お子さんの発達年齢によって異なりますが主に以下の様な特徴が学習障害/LDに認められます。
難読症〜読字困難
読み、書き、綴り、発話に支障あり。
失計算—算数困難
算数の問題を解いたり、時間を理解したり、お金を使うことに支障あり。
書字障害—書字困難
文字の手書きや綴り、考えをまとめるのに支障あり。
統合運動障害(感覚統合障害)—細かい運動が困難
手と眼の協調運動、バランス、手先の器用さに支障あり。
失語症/不完全失語症—言語に支障あり。
話し言葉を理解しにくく、読解力に乏しい。
聴覚情報処理障害—音の違いを聞き分けにくい
読字、理解力、言語に支障あり
視覚情報処理障害—視覚情報の解釈が困難
読字、算数、地図、図表、記号、絵の理解に支障あり。
7各発達年齢に対する学習障害/LDの微候と症状
未就学児にみられる学習障害/LD
言葉を発音しにくい
正しい言葉を見つけにくい
音韻認識が困難
数、色、形、曜日を覚えられない
クレヨン、ハサミなどをうまく使ったり、塗り絵をしたりするのが困難
5歳〜9歳でみられる学習障害/LDの微候と症状
文字と音のつながりを覚えられない音を組み合わせて言葉にできない読むときに基礎的な単語を間違えることが多い基礎的な算数の概念を覚えられない時計を読んだり順序を覚えたりすることができない新しい技能を習得するのに時間がかかる
10歳〜13歳でみられる学習障害/LDの微候と症状
読解力や計算力が低い自由回答式の質問や文章題に答えられない読み書きを嫌がり、声に出して読むことをしない。ひとつの文書に同じ単語を異なる綴りで書く物事を秩序立てて行う技能が低い
お子さんが学習障害/LDの疑いをお持ちの保護者様へ
今ではWEBなどで情報は沢山得られる時代です。ですが、情報が炸裂してるが故に却って混乱を招いてしまうという事実を忘れてはいけません。また、この頃は早急に明確な診断、判断をご希望、要求される保護者様も少なくありません。お気持ちはお察しいたしますが、どの専門家であれ、必ずしも明確な回答が得られるとは限らないという事実もあるということ、そしてお子さんの障害をはっきりさせることに囚われすぎるのは止めたほうが良いということをお伝えしたいと思います。どの専門家よりも保護者様のサポートが大事だということを忘れないでください。保護者様は専門家のアドバイスや協力のもとで、お子さんのサポートをすることに集中し、実用的な方法で症状に対処するのです。
学習障害/LDがあるお子さんでも大丈夫なのです。もちろん、お子さんに学習障害があるという事実に向き合うのは辛いことです。ご自身のお子さんが苦しんでいるのを見たい親などいません。
障害がお子さんの将来にとって何を意味するのか思いを巡らすかもしれませんし、お子さんがどうやって学校を卒業するのか気がかりかもしれません。多くの保護者様が世間体や差別などを優先に考えてしまっているのも否定できません。ですが忘れてはいけない大切な事は学習障害/LDのあるお子さんのほとんどは健常児と同じように長所と欠点の組み合わせの狭間で成長しているということです。ただ、独自の学習法が必要という事実があるということだけです。
(社)加藤永江教育研究所では、各分野の専門家が親身になりWISC検査から海外留学を視野に入れた教育まで0から第一のステップ、そして大事なお子さんの将来の道標を共に歩む機関です。