デビッドウェスクラー
米国ニューヨーク大学病院に所属していた「デビッドウェスクラー」氏によって開発された個別知能検査です。正式名称はウェスクラー式知能テストと呼ばれる検査ですが、略語として現在では「WISCテスト」と呼び、国によって言語の違いはありますが、世界で一番信頼度の高いテストとして知られています。また、WISCテストは障害児のみを対象とする検査ではなく、アメリカなどでは、有名なジュニアボーディングスクールに入学する為の出願の際に必須要件として求めている学校もあります。検査をすることによって、それぞれのお子さんの得意、不得意分野を事前に把握することが学校の主旨です。
また、WISCテストの適用年齢は成人用の場合は16歳から89歳、児童用は5歳から15歳までですが、7歳児まででは、正確な数字が出ない場合が多い事からWISC検査は8歳児の半ばから中学1年生までが最も適した学年、年齢であると思われます。
WISC検査は言語性と動作性との2つの検査から総合IQが計られます。またお子さんの得意、不得意分野も分かります。
また、WISCテストを短い期間に何度も違う場所で受けてから御相談に来られる保護者の方々が少なくないのも実情なのですが、お子さんは同じ検査を何度も受ける事によって、記憶が残ってしまう為、正確な結果を得る事が困難となります。したがって、WISCテストを受ける際はお子さんの年齢や検査士の経験度などをきちんと考慮して検査を受けましょう。そうでないとせっかくの検査が意味のないものになってしまいます。
それではWISC検査とは主に何を調べ、またWISC検査を受ける事によってなにが分かるのか説明しましょう。WISC検査は前述したように言語性(聴覚からの情報をことばによって応答する力)と動作性(視覚からの情報を動作によって応答する力)の2つの検査から「全検査」
(いわゆるIQ)の数字がでます。
WISC検査の全検査から出る数字から知能水準の分類が把握できます。以下に「WISC検査に於ける知能水準の分類」を記載しましょう。
WISC検査の知能水準の分類
IQ | 分類 | 理論上の割合(%) |
---|---|---|
130以上 | 非常に優れている | 2.2% |
120~129 | 優れている | 6.6% |
110~119 | 平均の上 | 16.1% |
90~109 | 平均 | 50% |
80~89 | 平均の下 | 16.1% |
70~79 | 境界線 | 6.7% |
69以下 | 精神遅滞 | 2.2% |
上記の図からも分かるように全児童の、およそ80%から85%が平均の下から平均の上の範囲に入ります。皆さんが良く間違われてしまう問いとして知能水準=学校、もしくは塾の偏差値と平行してると思ってしまうことです。
境界線や精神遅滞(知的障害)の数字を示す児童は思考や知識の限度が前提となるので、ここでは省きますが実際に全検査で140の知能水準が認められてもADD/ADHD/ASD、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、自閉スペクトラム、学習障害、アスペルガーなど様々な特徴が認められる児童は沢山います。
学習障害については学習障害をクリックして頂くと詳細が記載されております。ADD/ADHDについてはADD/ADHDをクリックして頂くと詳細が記載されています。その他の障害についてはその他をクリックして頂ければ詳細が記載されています。
重要な事は知能水準の高低のみで、お子さんの特徴を判断するのではなく各検査のバラつきによってお子さんの特徴が分かります。一番の理想としては知能水準そのものが多少低くても高くても各検査にバラつきがないことです。勉学や生活に余り影響を及ぼすことはありません。
ですが知能水準が高くても全検査項目(14項目)にバラつきが目立つと勉学、もしくは生活、またはその両方に難しさを訴えるお子さんが多いのです。
また、もう1つ大事なのはWISC検査から出る数字は「誤差を含んだ事実」であるということです。検査を受けるお子さんの当日の状態などによって、結果として測定される数字には多少の誤差がでます。あくまでも他の検査も含めWISC検査も数字には多少の誤差があるという事実を踏まえて検査をしましょう。
ですが、数字に多少の誤差があっても、WISCから計られる各検査項目の数字によって、お子さんの特徴は把握できます。ご家庭や学校内で少しでもご心配な事由などあれば、待つ必要もありませんし待っても良い事はないでしょう。
(社)加籐永江教育研究所では丁寧にWISCアセスメントを低い敷居で行える民間機関です。
お子さんも通常学校で行うテストとは違い、半分遊び感覚で行える検査です。
逆説として検査を薦める場合と薦めない場合も以下に記載します。
WISC検査を行うほうがよい場合
- 知的発達の遅れや特異な状態の存在を、そのお子さんをより理解するために知っておかなければいけないケース。
- 知的障害などの知的発達の遅れが疑われる場合にその遅れを明らかにしたい場合。
- LDのような知的発達に特異な偏りが疑われる場合
- 知能水準が高い事が適応の困難さに反映していると疑われる場合
WISC検査を行わない場合
- 知的発達の遅れや特異な状態の存在が、お子さんを理解するにあたって特に重要な要因となっていないことが明らかなケース。主として心因性、もしくは環境の問題が背景にあって、発達的な能力などが直接関与していないことが明らかな場合など。
WISC検査ができない場合
- WISC検査を行うほうが良いと判断された場合でも保護者の方の同意が得られていない場合やお子さんご自身が強い拒否感を示す場合など。